鐔・日本刀 鑑賞記

日本刀の鐔や小道具の美しさを再確認

遠見松透図鐔 林重光

遠見松透図鐔 林重光


遠見松透図鐔 無銘 林重光

 どなたも遠く山陰に陽が沈む様子をご覧になったことがあろうかと思う。太陽を背景に木々は陰影となる。揺れながら落ちてゆくその楕円形のなかで松樹も揺れている。
 科学好きであった筆者は、子供の頃のことだが望遠鏡で太陽を観察したことがある。山の彼方に沈んでゆくその様子を思い出してしまった。筆者が育った長野は山が近く、望遠鏡がなくとも陽に写る木々の陰影は鮮明に確認できた。
 この鐔の意匠にはそのような印象がある。同図は又七が製作しており、本作は全く同じ仕立て、同じ質感、同じ感性で再現したもの。質の良い鉄地は色合い黒く、表面がねっとりとした感があり、素材そのものも鑑賞の要点。
 遠望の松樹は陽炎のような揺らぎの中で実体をあらわにしない。文様表現されてこそ美しいのである。